Uguisunomori Resort Management Organization
in KARUIZAWA SAKU HIGHLAND SHINSHU
別荘ニュース

別荘地の管理費未納を許さない最高裁の判決が下る(委託契約すら結んでいなかったが)

別荘地の管理費を滞納している別荘地の所有者に対し、管理会社が未納管理費の支払いを求めて訴えた管理費請求裁判で、令和7年6月、管理費を支払っている他の別荘所有者との間で不公平が生じる等の理由でもって、別荘地所有者(管理委託契約すら結んでいなかったが)には管理費の支払義務がある、と最高裁判所が判決を下した。この別荘地管理費未納に関する判決は日本経済新聞(令和7年8月24日朝刊)の記事に掲載されているが、以下のような内容である。

那須塩原市にある別荘地の一区画を父から相続し所有していた人が、管理会社から1区画あたりの管理費年4万円ほどを5年分滞納しているとして約20万円の支払いを求められた訴訟について、父親の代から管理契約すら結んでいないのに費用を負担させられるのは契約自由の原則に反すると主張した。管理会社側は別荘地に社員を派遣し、道路脇の雑草刈りや落葉清掃、ごみの分別、街灯の交換、朝と夕方に敷地内をパトロールするなど管理を行い、管理に伴う費用は年間9000万円を超えるとして、管理費を支払わないその人が不当利得を得ているとして管理費支払いを求める主張をした。最高裁が着目したのはその人が受けていた利益と他の管理費を払っている所有者との「公平性」であり、別荘地全体が管理の対象になっているなか、管理費を払っていない一部の所有者だけを管理業務による利益の享受から排除することは困難であり、管理費を支払っていない人は「不当利得」を得ていると判断し、その人が管理費を負担しなければ管理費を支払っている他の所有者との間で不公平が生じると判断した判決である、と報道されている。

この最高裁の判決は別荘地やマンションにおける管理費負担の公平性を保つための重要な先例となります。うぐいすの森自治会においても管理費滞納者からの支払い回収がこの何年か重要な課題となっていますが、この最高裁の判決に力を得て、引き続き、財務状況の改善に向けて対処していかなければならないと考えます。

最高裁の判決要旨:上記事実関係によれば、本件土地は本件別荘地内の土地の1区画であるところ、本件別荘地は多数の土地及び道路等の施設から成る大規模な別荘地として開発され、現在も別荘地として利用されていることが明らかである。そして、上告人は、本件別荘地所有者との間で個別に本件管理契約を締結し、本件別荘地において継続的に本件管理業務を提供しているところ、その内容は、本件別荘地を支える基盤となる施設を本件別荘地所有者による利用が可能な状態に保全及び維持管理し、本件別荘地内の土地や上記施設に対する犯罪や災害による被害の発生等を予防し、本件別荘地の環境や景観を別荘地としてふさわしい良好な状態に保つものである。これらによれば、本件管理業務は、本件別荘地が別荘地として存続する限り、その基本的な機能や質を確保するために必要なものであり、また、本件管理業務は、本件別荘地の全体を管理の対象とし、全ての本件別荘地所有者に対して利益を及ぼすものであって、本件管理契約を締結していない一部の本件別荘地所有者のみを本件管理業務による利益の享受から排除することは困難な性質のものであるということができる。そうすると、上告人の本件管理業務という労務は、本件別荘地内の土地に建物を建築してその土地を利用しているか否かにかかわらず、本件別荘地所有者に利益を生じさせるものであるというべきである。そして、本件管理業務に要する費用は、本件別荘地所有者から本件管理業務に対する管理費を収受することによって賄うことが予定されているといえるから、被上告人からその支払を受けていない上告人には損失があるというべきである。 以上によれば、被上告人は、本件管理契約を締結することなく上告人の本件管理業務という労務により法律上の原因なく利益を受け、そのために上告人に損失を及ぼしたものと認められる。このことは、本件管理業務が本件土地の経済的価値それ自体に及ぼす影響が不明であったとしても変わるものではない。 そして、上記の本件管理業務の内容、性質に加え、被上告人は、本件別荘地が別荘地であることを認識して、その1区画である本件土地を取得したことは明らかであること、本件管理契約を締結していない本件別荘地所有者が本件管理業務に対する管理費を負担しないとすると、これを支払っている本件別荘地所有者との間で不公平な結果を生ずることになるほか、本件管理業務に要する費用を賄うための原資が減少して、本件管理業務の提供に支障が生じ、別荘地の基本的な機能や質の確保に悪影響が生ずるおそれがあること、本件管理業務は、本件別荘地所有者が個別になし得るものではなく、地方自治体による提供も期待できないものであって、上告人以外に本件管理業務を提供することができる者がいることはうかがわれないことも踏まえると、被上告人が上告人による本件管理業務の提供を望んでいなかったとしても、本件管理業務に対する管理費として相当と認められる額の負担を免れることはできないというべきである。このように解することが契約自由の原則に反するものでないことは明らかである。 したがって、被上告人は、上告人に対し、本件管理業務に対する管理費として相当と認められる額の不当利得返還義務を負う。これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上に説示したところによれば、上告人の請求には理由があり、これを認容した第1審判決は正当であるから、被上告人の控訴を棄却すべきである。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。(令和7年6月)